和音の構成音を、オクターブ単位で上下に動かします。
構成音の移動と重複
- 和音は、オクターブで移動しても同じ和音と考えます。
- 和音の構成音が単独でオクターブ移動しても同じ和音と考えます。
- 和音の構成音を違うオクターブに重複しても同じ和音です。
- ただし、最低音が根音でなくなると、和音の性格が若干変わります。これを和音の転回といいます。
三和音の転回
- 三和音は、音が3つあるので、低音に来る音によって3つの形があります。
基本形
- 転回していない和音、すなわち根音が最低音にある和音を、基本形といいます。
第1転回形
- 第3音が最低音になった和音を、第1転回形といいます。3度ずつ並べた基本形の和音から根音を上げるとこの形ができるのでこの名があります。
- 三和音の第1転回形は、六の和音とも呼びます。最低音の第3音からみて6度上に根音が置かれているからです。
バロック時代に、数字付き低音と呼ばれる書き方がありました。これは、低音楽器のパートの上に、他の和音構成音までの音程を書いて、その和音を示そうというものです。鍵盤楽器奏者はこれを見て、随意に伴奏を付けるのです。
たとえば、次の楽譜は、上段が数字付き低音、下段がその意味する和音です。(実際には、和声的なつながりを考えて演奏されます)
数字付き低音では、わかりきったものは省略します。例えば基本形三和音の音は原則として数字で表しません。第3音に当たる3と第5音に当たる5は必要がなければ省略されます。
三和音第1転回形では、低音の3度上に第5音が、6度上に根音が来ます。このうち、6度上の根音を表す「6」は「5の代わりに来るもの」として書かれ、3度上の第5音の記述は「わかりきった」として省略するのが普通です。
「六の和音」の名前は、この、「6」の数字に由来しています。
- 和音記号は第1転回形と言うことでI1のように書かれます。また、六の和音という意味でI6のように書くこともあります。
第2転回形
- 第5音が最低音になった和音を、第2転回形といいます。3度ずつ並べた基本形の和音から根音を上げ、さらに第3音を上げるとこの形ができるのでこの名があります。
- 三和音の第2転回形は、四六の和音とも呼びます。最低音の第5音からみて4度上に根音が、6度上に第3音が置かれているからです。
数字付き低音では、4の上に6を重ねて、のように表記します。ここから四六の和音と呼ばれます。
- 和音記号は第2転回形と言うことでI2のように書かれます。また、四六の和音という意味でIのように書くこともあります。
七の和音の転回
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七の和音には音が4つあるので、低音に来る音によって4つの形があります。
基本形
- 転回していない和音、すなわち根音が最低音にある和音を、三和音同様、基本形といいます。
第1転回形
- 第3音が最低音になった和音を、三和音同様、第1転回形といいます。
- 七の和音の第1転回形は、五六の和音とも呼びます。低音からみて、5度のところに第7音が、6度のところに根音が置かれているからです。他に、3度のところに第5音が置かれています。
数字付き低音では、5の上に6を重ねてのように表記します。全く省略しないと下から3、5、6を重ねて書くことになります。3は省略できますが、5は省略できません。「6」が「5はなし」を示すからです。必要な第7音を表すため、5も書かれます。ここから五六の和音と呼ばれます。
- 和音記号は第1転回形と言うことでIのように書かれます。また、五六の和音という意味でIのように書くこともあります。
第2転回形
- 第5音が最低音になった和音を、三和音同様、第2転回形といいます。
- 七の和音の第2転回形は、三四の和音とも呼びます。
数字付き低音では、3の上に4を重ねてのように表記します。全く省略しないと下から3、4、6を重ねて書くことになります。3は省略できません。「4」が「3はなし」を示すからです。必要な第7音を表すため、3も書かれます。一方、3と4があれば自然に6が出てくるので、6は省略されます。
- 和音記号は第2転回形と言うことでIのように書かれます。また、三四の和音という意味でIのように書くこともあります。
第3転回形
- 七の和音には第7音まであります。この第7音が最低音になった和音を、第3転回形といいます。
- 七の和音の第3転回形は、二の和音とも呼びます。
数字付き低音では、2、または2の上に4を重ねてのように表記します。2だけよりも2と4の方が例が多いかも知れません。全く省略しないと下から2、4、6を重ねて書くことになります。
- 和音記号は第3転回形と言うことでIのように書かれます。また、二の和音という意味でI2のように書くこともあります。
九の和音の転回
- 九の和音でも、第3音、第5音、第7音を低音とした和音が第1転回形、第2転回形、第3転回形です。九の和音の第9音は特殊で、根音の9度以上、上に置かなければならないなどの制約があります。このため、九の和音にはこのままの形では、第9音を最低音とする第4転回形はありません。
転回形の和音の機能
- 転回形の和音の機能は、原則として基本形と変わりません。ただし、三和音の第2転回形は、単独ではひとつの機能を持たず、後続する(または前後の)和音に含まれると見なされます。
分散和音
- 和音の構成音を時間的にずらして順番に演奏することを分散和音またはアルペッジョといいます(アルペッジョには別の意味もあります。後述)。
- 分散和音は、和音の転回形に似ている部分がありますが、分散和音と転回形とは全く異なる概念のものです。
- 次の譜例で、上段は分散和音、下段はその分散和音が示す和音イメージです。
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