長音階に基づく音楽を長調と言います。英語ではMajor、ドイツ語ではDur(ドゥア)と言います。
ハ長調
- ハ音を主音とする長音階に基づく長調をハ長調と言います。英語ではC Major、ドイツ語ではC-durと言います。
- ドイツ語では長調のとき、主音の音名を必ず大文字にします(音楽理論以外の場面では例外も見られます)。「C:」のように大文字の音名にコロンを付けて略記します。
- ハ長調は、このように変化記号を使いません。ですから、調号(後述)はありません。
ト長調
- ハ長調を、そのままの形で完全5度高く(完全4度低く)すると、主音がト(G)になります。これを、ト長調、G Major、G-durと言います。
- この調では、第7音に♯が付きます。つまりFに♯が付きます。曲の中では始終この音に♯が付くことになりますので、五線のはじめにまとめて書きます。この、まとめて書く変化記号を、調号、または調子記号と呼びます。調号の有効範囲についての事項は、後述します。
- Fの♯はト音記号では第5線に置きます。また、ヘ音記号では1本下に書きます。
ニ長調
- ト長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音がニ(D)になります。これを、ニ長調、D Major、D-durと言います。
- この調では、第3音、第7音に♯が付きます。ト長調のFに加えてCに♯が付きます。これが調号になります。
- 新たに加わったCの♯を後に書きます。また、それをト音記号では第3間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
イ長調
- ニ長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音がイ(A)になります。これを、イ長調、A Major、A-durと言います。
- この調では、第3音、第6音、第7音に♯が付きます。ニ長調のF、Cに加えてGに♯が付きます。これが調号になります。
- 3つの♯は、加わった順に書きます。また、新たに加わったGの♯をト音記号では上第1間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
ホ長調
- イ長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音がホ(E)になります。これを、ホ長調、E Major、E-durと言います。
- この調では、第2音、第3音、第6音、第7音に♯が付きます。イ長調のF、C、Gに加えてDに♯が付きます。これが調号になります。
- 4つの♯は、加わった順に書きます。また、新たに加わったDの♯をト音記号では第4線に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
ロ長調
- ホ長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音がロ(B、H)になります。これを、ロ長調、B Major、H-durと言います。
- この調では、第2音、第3音、第5音、第6音、第7音に♯が付きます。ホ長調のF、C、G、Dに加えてAに♯が付きます。これが調号になります。
- 5つの♯は、加わった順に書きます。また、新たに加わったAの♯をト音記号では第2間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
嬰ヘ長調
- ロ長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音が嬰ヘ(F♯、Fis)になります。これを、嬰ヘ長調、F sharp Major、Fis-durと言います。
- この調では、主音、第2音、第3音、第5音、第6音、第7音に♯が付きます。ロ長調のF、C、G、D、Aに加えてEに♯が付きます。これが調号になります。
- 6つの♯は、加わった順に書きます。また、新たに加わったEの♯をト音記号では第4間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
嬰ハ長調
- 嬰ヘ長調を、完全5度高く(完全4度低く)すると、主音が嬰ハ(C♯、Cis)になります。これを、嬰ハ長調、C sharp Major、Cis-durと言います。
- この調では、すべての音に♯が付きます。嬰ヘ長調のF、C、G、D、A、Eに加えてB(H)に♯が付きます。これが調号になります。
- 7つの♯は、加わった順に書きます。また、新たに加わったB(H)の♯をト音記号では第3線に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
嬰種長調
- これまで挙げた、ト長調から嬰ハ長調までの長調を、♯(嬰記号)が付く長調という意味で、「嬰種長調」と言います。一般には「♯系の長調」という言い方もします。
- 嬰種長調では、調号を必ず先に挙げた順に、またその位置に、書きます。
- 各調の♯の数と嬰ハ長調の調号を覚えておけば、その調の調号を書くことができます。調号が7未満の場合には、それまでの♯で止めればいいからです。
- 各調の調号は、一般に
トニイホロヘハ
と覚えます。「ヘ」以降には「嬰」が付きますが、これは、ヘがその前のロと減5度であることを想起すれば、わかるはずです。場合によってはその調の調号を見て判断することもできます。
- たとえば、ニ長調は「ニ」が2番目ですから♯が2つです。ですから、
の2番目までで止めれば
のようにニ長調の調号が書けます。
- また、♯が4つの長調は4番目の「ホ」のホ長調です。
ヘ長調
- これまではハ長調を起点に、完全5度高く(完全4度低く)たどってきましたが、今度は逆に完全5度低く(完全4度高く)たどります。
- ハ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音がヘ(F)になります。これを、ヘ長調、F Major、F-durと言います。
- この調では、第4音に♭が付きます。つまりB(H)に♭が付きます。これが調号になります。
- B(H)の♭はト音記号では第3線に置きます。また、ヘ音記号ではやはり1本下に書きます。
変ロ長調
- ヘ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変ロ(B♭、B)になります。これを、変ロ長調、B flat Major、B-durと言います。
- この調では、主音と第4音に♭が付きます。ヘ長調のB(H)に加えて、Eに♭が付きます。これが調号になります。
- 新たに加わったEの♭を後に書きます。また、それをト音記号では第4間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変ホ長調
- 変ロ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変ホ(E♭、Es)になります。これを、変ホ長調、E flat Major、Es-durと言います。
- この調では、主音、第4音、第5音に♭が付きます。変ロ長調のB(H)、Eに加えて、Aに♭が付きます。これが調号になります。
- 3つの♭は、加わった順に書きます。また、新たに加わったAの♭をト音記号では第2間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変イ長調
- 変ホ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変イ(A♭、As)になります。これを、変イ長調、A flat Major、As-durと言います。
- この調では、主音、第2音、第4音、第5音に♭が付きます。変ホ長調のB(H)、E、Aに加えて、Dに♭が付きます。これが調号になります。
- 4つの♭は、加わった順に書きます。また、新たに加わったDの♭をト音記号では第4線に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変ニ長調
- 変イ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変ニ(D♭、Des)になります。これを、変ニ長調、D flat Major、Des-durと言います。
- この調では、主音、第2音、第4音、第5音、第6音に♭が付きます。変ホ長調のB(H)、E、A、Dに加えて、Gに♭が付きます。これが調号になります。
- 5つの♭は、加わった順に書きます。また、新たに加わったGの♭をト音記号では第2線に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変ト長調
- 変ニ長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変ト(G♭、Ges)になります。これを、変ト長調、G flat Major、Ges-durと言います。
- この調では、主音、第2音、第3音、第4音、第5音、第6音に♭が付きます。変ホ長調のB(H)、E、A、D、Gに加えて、Cに♭が付きます。これが調号になります。
- 6つの♭は、加わった順に書きます。また、新たに加わったCの♭をト音記号では第4間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変ハ長調
- 変ト長調を完全5度低く(完全4度高く)すると、主音が変ハ(C♭、Ces)になります。これを、変ハ長調、C flat Major、Ces-durと言います。
- この調では、すべての音に♭が付きます。変ホ長調のB(H)、E、A、D、G、Cに加えて、Fに♭が付きます。これが調号になります。
- 7つの♭は、加わった順に書きます。また、新たに加わったFの♭をト音記号では第1間に置きます。また、ヘ音記号では1本下になります。
変種長調
- これまで挙げた、ヘ長調から変ハ長調までの長調を、♭(変記号)が付く長調という意味で、「変種長調」と言います。一般には「♭系の長調」という言い方もします。
- 変種長調でも、調号を必ず先に挙げた順に、またその位置に、書きます。
- 各調の♭の数と嬰ハ長調の調号を覚えておけば、その調の調号を書くことができます。調号が7未満の場合には、それまでの♭で止めればいいからです。
- 各調の調号は、一般に
ヘロホイニトハ
と覚えます。「ロ」以降には「変」が付きますが、これは、ロがその前のヘと減5度であることを想起すれば、わかるはずです。場合によってはその調の調号を見て判断することもできます。
- たとえば、変ロ長調は「ロ」が2番目ですから♭が2つです。ですから、
の2番目までで止めれば
のように変ロ長調の調号が書けます。
- また、♭が4つの長調は4番目の「イ」の変イ長調です。
調号の効力
- 調号は、五線ごとに、ひとつの音名につきひとつしか書かれません。
- 調号は、臨時記号と異なり、小節線を越えて有効です。
- 調号は、臨時記号と異なり、異なるオクターブの音にも有効です。
次の音はすべて調号が効いています。
- 臨時記号で取り消されたり変更された調号は、次の小節で復活します。臨時記号の効力は小節線までだからです。
次の譜例の2小節目の音は、すべて臨時記号が取り消されて、調号が効いています。
もっとも、次のように警告の臨時記号と書くこともあります。
- 調号は、拍子記号よりも前に書きます。
- 調号は、拍子記号と異なり、段が変わるごとに段の最初に書くのが本則です。
- 調号が変わるときは、普通複縦線を書き、新しい調号を書きます。♯や♭のうち、取り消されるものがあるときには、を書くのが普通です。
は、複縦線の左に書かれることもあります。
- 調が途中で変わることを転調と言います。楽譜上では、転調しても調号を変えないでそのまま臨時記号で書くことが多く行われます。
問題