ここでは、2分割と3連符の組み合わせを中心に、応用的な内容を扱っていきます。
基本的な考え方
- たとえば、2分割と6連符、3連符と6連符なら、単純です。
- しかし、2分割と3連符だと、リズムが一致せず食い違います。
どのようにリズムを取ったら良いのでしょうか。
- このような場合には、まず2分割と3連符の、どちらが基本リズムであるかを考え、どちらかに決める必要があります。通常、同じリズムが継続している方、
または低音で鳴らされている方
を、基本リズムにします。上の2つの例ではどちらも3連符が基本リズムになります。2分割と3連符でなくても、同じように考えます。
- この稿では、2分割と3分割があったとき、3分割が基本リズムであれが2:3のように記述することにします。また、この稿の譜例では、この後、基本リズムを下に書くことにします。
2:3
- 3連符が基本リズムで、2分割のリズムを取るとき。この稿では原則として4分音符を分割するものとして譜例を示しています。
- 3連符のそれぞれの音符を2等分して考えます。
2等分したものを、3つずつ繋げると、2分割のリズムが完成します。
=
- 第2の方法。上の方法で、無駄を省くために、3連符の2つめだけ2分割します。
分割したものを前後と繋げると、2分割のリズムが完成します。
=
- 第3の方法。第2の方法のリズムで最初の2つを繋げると付点になりますから、付点のリズムで考えます。
あとの2つを繋げると、2分割のリズムが完成します。
=
- このリズムは次のように書くこともできます。
- ここでは4分音符の分割について考えましたが、他の音符の分割についても考えてみてください。
3:2
- 2:3と同じリズムですが、基本リズムが3連符でなく2分割リズムである場合です。
- まず、8分音符(この譜例の場合)のそれぞれを16分音符(この譜例の場合)の3連符で3等分します。
2つずつ繋げると、3分割のリズムが完成します。
=
- このリズムは次のように書くこともできます。
- このリズムを俗に「二拍三連」と呼びます。
4:3
- 3連符が基本リズムで、4分割のリズムを取るとき。
- 3連符のそれぞれの音符を4等分して考えます。
3つずつ繋げると、4分割のリズムが完成します。
=
- 同じですが、別の書き方。
3連符上の「付点のリズム」
- 基本リズムが3連符で、いわゆる「付点のリズム」を取るとき。
- これは先の4:3のリズムの最初の3つが繋がったものですから、
まず4:3のリズムを考えて、
=
最初の3つを繋げます。
=
- または、3連符のそれぞれの音符を4等分してから、
最初の9個と残りの3個を繋げます。
=
これを繋げて書くと、次のようになります。
3:4
- 基本リズムが4分割で、3連符が乗ります。
- 4分割した16分音符(この譜例の場合)をそれぞれ3等分します。
4つずつ繋げると、3分割のリズムが完成します。
=
- 上の方法で、最初と最後の16分音符(この譜例の場合)は分割する必要がありませんから、次のように考えることができます。
- これは更に次のようにまとめて書くことができます。。
6連符上の「付点のリズム」
- 基本リズムが6連符で、いわゆる「付点のリズム」を取るとき。
- 付点リズムとは4分割リズムの最初の3つが繋がったものですから、
まず6連符上の4分割を考えます。
これは、2:3が2つ繋がったものです。この譜例では、上の2:3の譜例に比べて、それぞれの音符が半分の長さになっています。
これはこのように書き換えられますね。
最初の3つを繋げれば完成します。
=
- これは、次のように書き換えることができます。
- これは、次のように書くこともできます。
- これはさらに、次のように書くことも可能です。
3:8
- 基本リズムが8分割で、3連符が乗ります。ここでは、4分音符でなく2分音符の分割で譜例を示します。
- 3:4のリズムを2つ繋げたものを、
2つずつ繋げると、3:8のリズムになりますから、ここから考えて行きます。
=
- 3:4のリズムは、次のように考えるのでした。
それが2つですから、次のようになります。
これを2つずつ繋げれば、完成します。
=
- これは、次のように単純化して書くことできます。
そのほかの組み合わせ
- そのほかの組み合わせの中で、例えば6:4のリズムは
3:2のリズム2個
と考えることができます。そのように、2と3のリズムに組み替えることができれば、この稿に書かれたことの応用で解決できるはずです。
それ以外の5連符、7連符等の組み合わせの場合、
この稿に書かれたような厳密に正確なリズムを求めるのは、通常、実際的ではありません。両方のパートがどのように組み合うか、パートの各音の割合に従って順番が守られていれば、十分なことがほとんどです。実際の演奏では、順番すら守られない演奏も散見します。
連符の同時でない組み合わせ
- ここに書かれたことは、同時に2つのパートが演奏されるときでなくても利用できます。例えば、声楽や管楽器のような単旋律でも、複数の分割リズムが継続するとき、
基本リズムを定めて、基本リズムを音は鳴ってなくても心の中で鳴らし続け、
同時に演奏しているときのように分割して演奏すると、
正確に演奏しやすくなります。
リズムの演奏の実際
実際の演奏に当たって、リズムをどのように演奏すべきか、については考察が必要です。
このページでは、書かれた楽譜をどうしたら理論通りに正しく演奏できるか、という観点で見てきました。
しかし、音楽の様式—時代様式やジャンル—によっては、必ずしも理屈上正しいリズムが求められているわけでないことがあります。
-
たとえば、シューベルトやショパン並びにそれ以前の作曲家では、旋律の付点リズムと伴奏の(基本の)リズムが食い違う場合には、書かれているとおり正確に演奏されるべきでなく、伴奏のリズムに合わせて演奏すべきとされます。
例えば、3連符の上に付点リズムがあって、特に
のように音符の縦を合わせて書いてあれば(場合によってはそうでなくても)、4分割リズムによる3:1
でなく、3分割リズムによる2:1
で演奏すべきですし、6連符の上に付点リズムが
または
のように音符の縦を合わせて書いてあればがあれば(場合によってはそうでなくても)、4分割リズムによる3:1
でなく、4:2(2:1)
や5:1
で演奏すべきです。
特にショパンの場合、付点リズムでなくてもそのようなことは起こり、ショパンの求める旋律のリズムを知るためには、自筆譜か自筆譜に忠実に基づく楽譜で、どのように縦を合わせて書いているかを調べる必要があります。また、自筆譜通りのリズムの書き方に従わず、実際に求められるリズムに書き換えた楽譜もありますから、それを参考にしても良いでしょう。
- ジャズやジャズの影響を受けた音楽では、拍を2分するリズムで、前半を長く、後半を短く演奏します。その加減は様々です。スウィングまたはバウンスと呼ばれ、特に3連符リズムの2:1の場合にシャッフルと呼ばれますが、楽譜の書き方は拍を等分した音符だったり、付点のリズムだったりです。それを楽譜通りにきっかりと分けようとするのは、正しい演奏とは言えないでしょう。スウィングを用いる曲で部分的に等分することは、イーブン、または、ストレートノートと呼びます。
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