楽譜をなるべく簡便に記すため、音符を略記する方法があります。
トレモロ
- 同音(同和音)を細かく反復することを「トレモロ」といいます。トレモロを略記するには、音価を、どの音価で刻むかで、表現します。刻みは、斜線で表します。
- 斜線以外の部分(普通の音符の部分)は、トレモロ全体の音価の合計を表します。
- 斜線の本数は、8分音符以下の音符の「はた」の数を表し、これが刻んだ音符1つの音価を表します(譜例ア、上段が略記法、下が実際の演奏)。たとえば斜線が2本なら、16分音符で刻みます。
- 音価の合計が8分音符以下の場合、音価の合計を表す普通の「はた」に、刻みを表す斜線を加えます。斜線は、刻みによって増える「はた」の数を表します。つまり、書かれた「はた」と斜線の本数を合わせた数の「はた」に相当する音価で刻みます。たとえば、8分音符に斜線が2本付いていたら、32分音符で刻みます(譜例イ)。連桁の場合には、斜線の角度を連桁と平行に書くことがあります。
- 3連符に刻むときには、音符に付点を付けて、3連符を表す「3」を付します。例えば、4分音符を3連符に刻むと、8分音符3つになりますが、これを合計す0ると付点4分音符分になるので、付点を付けるのです。(譜例ウ)
- スタッカートが付くときには、刻んだ音の数だけの点を横に並べます。(譜例エ)
- スタッカートを使うと、4分音符に刻む同音反復も表現することができます。(譜例オ)
- 刻みが、不可能なほど細かいときには、「なるべく細かく刻む」の意味になります。また、斜線に「trem.」と添えてあるとき、この「trem.」は「なるべく細かく」を示します。なお、一般に、斜線3本のときには、「なるべく細かく」の意味に取るのが普通です。
- ピアノの場合、和音に斜線が付けられているときには、次に示す2音(2和音)間のトレモロとして演奏するのが普通です。これは、ピアノが同音反復が不得手だからでしょう。
2音間のトレモロ
- 2音(2和音)を交互に演奏するトレモロを略記する方法があります。
- 2音(2和音)のそれぞれを、音価の合計を表す音符にして、横に並べます。一見、音価が倍になったようになります。その上で、刻んだ1つの音符の音価を示す斜線を、間に挟みます(譜例ア)。
- 全体の音価が(付点)2分音符の場合には、斜線を「ぼう」に接続させて書くのが普通です。一見、普通の連桁のように見えますが、「たま」が白いので区別できます(譜例イ)。次の4分音符のように接続させないで書くことも、また斜線が2本以上のときにはその一部の線だけを接続させることもあります。
- 全体の音価が4分音符の場合には、斜線を「ぼう」と接続させないのが、正しい書き方です(譜例ウ)。接続させると、次の8分音符以下の場合を示すことになりますが、実際にはそのような楽譜も多くあります。
- 全体の音価が8分音符以下の場合には、全体の音価を表す「はた」を連桁として書き、刻みで加わる分の「はた」を斜線で接続させずに書きます。(譜例エ)
反復
- 1小節未満の長さの音型を反復するとき、斜線で反復分を表すことがあります(譜例ア)。
- 小節単位の反復は、斜線の横に点を付けます。最近の楽譜では一般に、1小節の反復には斜線を1本(譜例イ)、2小節には2本(譜例ウ)を使います。